巻頭言「共生と平和」田 森 茂 基(旭川バプテスト教会)

 

「わたしはあなたの名を代々に語り伝えよう。諸国の民は世々限りなく/あなたに感謝をささげるであろう。(詩編四五編一八節/新共同訳)」

 二〇一三年度に開催された『隣人に出会う旅 ~旭川・二風谷の旅~』に現地スタッフとして関わったことをきっかけに、アイヌ民族についての学びを始めました。その具体の一つとして、私は二〇一六年から、旭川市博物館が主催する連続講座を受講し続けています。その中で、特に印象に残っているのが、二〇一八年の講座で聞いた、アイヌ民族における「伝承」についての話でした。 

 私はかつて、「伝承」という言葉を聞くと、一言一句を間違えずに継承するイメージを持っていたのですが、アイヌ文化における「伝承」とは、メッセージ性の継承であり、むしろ表現に関しては全く別のものに作り替えるという事を学びました。そしてそれを聞いた時、私はふと、聖書の記述は私がイメージしていた「伝承」の理解と同じであり、それに対して、礼拝における説教はアイヌ的「伝承」であると感じたのです。

 聖書の記述は、それぞれの時代における、神と民との対話の記録であり、また民の神への信仰告白として、一言一句、変わることのない伝達を目指してきました。その一方で、礼拝における説教は、時代状況や、共有する相手によって変化しながら、脈々と受け継がれてきたと見られます。そしてそれはどちらも、詩編四五編一八節が示しているように、世の人々が神に感謝をささげる為であると、私は改めて気付かされました。この業の為に私たちは聞き、また語るのです。