巻頭言「賛美あるところに平和あり 加藤 誠」

 渡邊さゆり牧師(日本バプテスト同盟)が聖書を教えている保育専門学校で礼拝に出席していた学生から「賛美歌を歌っていると平和な気持ちになります」という応答をもらったという。「どういうことですか?」と尋ねると「賛美歌を歌っていると誰かに対する憤りが静められ、誰かから受けた痛みがやわらげられるから。賛美歌を歌っていたら相手をやっつけてやりたいとか、戦争したいという思いにならないですよね?」と。

 その学校の礼拝でいつも賛美するのは校歌の『正しく清くあらまし』(教団讃美歌四五二番)だという。この歌詞は、若くしてインド伝道に献身し三五歳の若さで劇症のインフルエンザのため亡くなったH・A・ウォルターが書いたもの。英語の歌詞をそのまま訳すと一番は次のようになる。「わたしは正しくありたい/わたしを信頼してくれている人たちがいるから。わたしは清くありたい/わたしを心にかけてくれている人たちがいるから。わたしは強く、勇敢でありたい/この世界には苦難と試練があふれているから」。そして四番以下は私たちの間に低く貧しくなられたキリストが賛美されていく。「いったいだれがこんなにも低く、貧しく、痛みの中に生きられただろうか。いったいだれがわたしの心に思い浮かびもしなかった喜びを与えてくれただろうか…」と。

 賛美歌は私たちの心にイエス・キリストを映し出し、神の国の愛と正しさに向けて私たちの心を高く引き上げてくれる。その賛美が歌われるところでは、誰一人として他者を傷つけ、悲しませる戦争を肯定することはできない。

 日本の私たちがいつも以上に平和を祈るように導かれている八月。主イエスが私たちに与えてくれた神に向かう賛美を心に刻みたい。