十月二六日に行われた起工式。きれいに整地された場所に立ちながら、私の中に二つの想いが交錯していた。一つは「大井教会の信仰の先輩たちが大切にしたものを大切に受け継いでいく責任の重さ」と、もう一つは「新しい礼拝堂を通して、新しくされていく教会への期待」の二つである。
七四年前(一九四六年)、当時の教会の財政実力をはるかに超える恵みによって現在地を与えられた教会は、戦争ですべてを失いながらも聖書の福音に真の命を見出だし、土まみれ汗まみれになりながら整地に励んだ。そのイエス・キリストに向かう信仰をこの時改めて大切に受け継いでいきたいと思う。
一方で、私たちは新礼拝堂を祈り願う中で三つのコンセプトを掲げた。①地域社会のシンボルとなる礼拝堂、②御言葉と会衆賛美に励まされる空間、③心のバリアフリーが生まれる空間の三つである。一つ目の「地域社会のシンボル」とは印象的な目を引くデザインの建物という意味ではない。地域の人びとに親しみを覚えていただき、足を運んでいただけるような礼拝堂という意味である。あけぼの幼稚園や教会学校の子どもたちに「ここは僕が/わたしがページェントをした礼拝堂だ」「イエスさまのお話しを聞いた礼拝堂だ」と思い出してもらえる礼拝堂である。大岡山建築設計研究所の田淵先生たちが建物全体のバリアフリーを考慮し、御言葉に集中し賛美しやすい空間を設計してくださっているが、そこに集う私たち自身が御言葉を真剣に求め、心から賛美をする群れでなければただの「箱」にすぎない。私たちの中に地域の方々を心から誰でも喜んで迎えていく祈りがなければ「心のバリアフリー」は生まれない。建物が新しくされる中でますますキリストの土台に根ざし、新しく創造され、自らの言葉でキリストを紹介していく一人ひとりでありたいと心から願う。