巻頭言「心のしなやかさ 加藤 誠 」

 ユヴァル・ノア・ハラリは、非力な動物である人類(サピエンス)がなぜ地球上でこれだけの力を持つようになったのかを考証した『サピエンス全史』で名を知られるようになったイスラエルの歴史学者です。

「この十年間に生まれた人に対し、どんなアドヴァイスをしますか」という問いに、ハラリはこう応えています。「二十年後に世界がどう変わり、雇用がどうなっているかを、子どもたちに教えることは誰にもできません。今、学校で学んでいることは二十年後には通用しないでしょう。では、どうしたらよいのか。わたしにできる助言は『精神の健康と豊かな感情を育んでください』ということです。変化するスピードがますます速くなる二一世紀において確かなことは、私たちは五十代になっても六十代になっても常に新しく変わり続ける、自己変革を求められます。私たちは五十歳をすぎると自らの思考や生活スタイルを変えることにストレスを感じおっくうになりますが、二一世紀には心のバランスとレジリエンス(しなやかさ)がとても大切になるのです」と。

若者たちに「精神の健康と豊かな感情を育んでください」というハラリの助言はちょっと意外に思いました。当たり前のごく基本的なことに思えたからです。ただ今の私たちはみんな小さなコンピューターを手にして情報の洪水の中におぼれている。その情報にはウソやデマが多く含まれているにもかかわらず、みんなが小さなコンピューターに心を支配されて、心のレジリエンス(しなやかさ)を失い、すっかり固くひからびた状態になってしまってはいないか。将来を生きる若者たちだけでなく、今を生きる私たちにこそイエス・キリストから湧き出る生きた水が必要なのではないか。そう考えさせられるのです。