「運命の歯車が突然回り出す」。人生の大きな転換点や、運命的な出会いをきっかけに、状況が突然大きく変わり始めることをこう表現したりしますが、マリアとエリサベトに起こったことが、まさにそうでしょう。
日常の暮らしの中に天使が突然現れて、ふつうの人間にはまったく理解不能なことが告げられ。自分たちがそれぞれ思い描いていた人生とはまったく異なる道に突然引き入れられていく。
二人の受胎は「大きなリスクを背負う」点で共通していました。エリサベトの受胎は「肉体的にありえない」ことであり、マリアの受胎は「律法的にあってはならないこと」でした。エリサベトは超高齢出産という肉体的なリスクを引き受け、マリアは律法的裁きというリスクを引き受けねばなりませんでした。彼女たちがどれほど動揺し、恐れと不安に襲われ、周囲の人々の好奇な視線に深く心を傷つけられたか。想像にかたくありません。
しかしクリスマスは、逆風が吹き荒れるような状況において「いと高き方の力に包まれて」歩む幸いと喜びを私たちに示します。受胎告知の場面で最も力強く迫ってくるのは天使ガブリエルの「聖霊があなたに降り、いと高き方の力があなたを包む」という言葉であり、マリアの「お言葉どおり、この身になりますように」という信仰の言葉でしょう。マリアとエリサベトは自分たちの喜びが満たされる道ではなく、神の喜びがあふれる約束の道を選び取りました。
神は御自分を愛する者たちに「人の心に思い浮かびもしなかったこと」(Ⅰコリント2・9)を準備されている方です。今年のクリスマスが、この神の備えたもう喜びを体験する時となりますように。