新しい時代が始まった!   加藤 誠

ペンテコステは、キリストが復活したイースターから「五十日目」に、最初のキリスト教会が誕生した日です。キリストが処刑された十字架の事件後、すっかり姿を消していた弟子たちが二千年前のこの日、堂々と「あのイエスこそ、神から遣わされた救い主だ!」と宣教を始めたのでした。

 

ペトロは旧約聖書の預言者ヨエルの言葉を引用し、人々にこう語りました。「神は言われる。終わりの日に、わたしの霊をすべての人に注ぐ。すると、あなたたちの息子と娘は預言し、若者は幻を見、老人は夢を見る」(使徒2・17)。

それまでは選ばれた指導者にだけ注がれてきた「神の霊」が、すべての人に注がれる「新しい時代が始まった!」という宣言です。才能に恵まれた特定の預言者だけが「預言する」(神の言葉を取り次ぐ)のではなく、小さな息子も娘も、すべての者たちがイエス・キリストの良き知らせを語りはじめるのです。

「若者は幻を見る」。ここでの「幻」は神が与える「ヴィジョン」ですから、若者たちが「この世界を、神と共に、こんなふうに生きていきたい」と希望にあふれて歩むことを意味します。「老人は夢を見る」。ふつうは、未知の可能性を豊かに秘めた若者が「夢を見る」ものでしょう。ところが、人生の終わりを見つめる年齢になった者たちが目を輝かせて夢を語る。そんな「新しい時代が始まった!」と、ペトロは胸を躍らせて語ったのでした。

 

この「新しい時代」をもたらしたのは、聖霊です。十字架の挫折を味わい、自らの弱さを思い知った弟子たちが、聖霊の息吹を受けて百八十度方向転換させられた時、神の幻と夢を抱いて生きる新しい存在とされていったのです。