巻頭言「神の国の『門』」加藤 誠

「はっきり言っておく。わたしは羊の門である」(ヨハネ10・7)。

 主イエスの時代、夜になると羊たちは石垣の囲いの中で過ごしました。石垣の囲いには「門」と呼ばれる入り口が一か所あり、その「門」を羊飼いが交代で番をしたのだそうです。石垣の中は、羊たちが野獣の危険から守られて、安心して疲れた体を休めることができる場所でした。そして朝になると羊たちは、自分の名を呼ぶ羊飼いに導かれて石垣の囲いを出て、牧草のある場所や池のほとりに連れていってもらいました。

 つまり「門」は、夜には安心して身を横たえることのできる場所の「入口」であると同時に、朝にはその日の食物と水を得るために出かけていく「出口」でした。その「門」を羊飼いがいつも守ってくれているおかげで、羊たちは日々の命を豊かに生きることができたのです。

 羊が一匹だけで夜を過ごせないように、私たちもまた一人だけでは夜を過ごせない者です。夜は不安や恐れに押しつぶされたり、あるいは自らの過去の罪過にさいなまれる時であるからです。また羊が自分の力で食物と水を見つけられないように、私たちもまた日々の課題に向かう力を主なる神からいただかなければ新しい朝を迎えることができません。そのような私たちが夜に安心して眠りにつき、朝に必要な御言葉と助けをいただくことができるように、主イエスは私たちの十字架を背負い、神の永遠の愛をあらわしてくださいました。

「わたしは門である。わたしを通って入る者は救われる。その人は、門を出入りして牧草を見つける」(ヨハネ10・9)。

 今朝もこの方の語りかけに聴いていきましょう。