神の唯一の言葉   加藤 誠

日本の国はいま大切な分岐点に立っています。どのような道を選び取るのかを国民に問うことなく、政府の憲法解釈で簡単に理念変更ができるようになれば、国民が自分で考えることを放棄し、あっという間に「右へならえ」がまかり通る国になってしまうでしょう。そのことを一番危惧します。一人ひとりが自分で考えることを放棄してはならないのです。

国会前に行くと、自分で考え自分の責任で言葉を語る人々、組織に動員されたからではなく、一人でもそこに出かけていく人々の姿に心を揺さぶられます。語られる角度はそれぞれ違いますが、その人自身の体重がしっかりかかっている言葉には力があり、希望と励ましをもらいます。

 

皆さんは、生と死のあらゆる場面において、心から信頼し、従うことのできる言葉を持っておられるでしょうか。死に際して聴きたいと思う言葉がありますか。「この言葉に生きて悔いなし」と言い切れる言葉と出会っていますか。

「あなたがたは、神によってキリスト・イエスのうちにあるのです。キリストは、わたしたちにとって、神からの知恵、すなわち、義と聖化と贖いとになられました」(第一コリント1・30 私訳)。

聖書が証しするイエス・キリストは、わたしたちが聴くべき「神の唯一の言葉」です。キリストは、わたしたちの一切の罪の赦しについての「神の慰めの宣言」であり、同時にわたしたちの全生活に対する「神の要求」です。キリストによってわたしたちは、神なきこの世界の束縛から脱して、キリストの自由で感謝に満ちた奉仕という、喜ばしい解放を与えられるのです(1934年、ナチスに抵抗して発せられた「バルメン宣言」の第一項・第二項より)。