新しい歌、神への賛美を   加藤 誠

「主は耳を傾けて、叫びを聞いてくださった。滅びの穴、泥沼からわたしを引き上げ、わたしの足を岩の上に立たせ…わたしの口に新しい歌を、わたしたちの神への賛美を授けてくださった」(詩編40・2~4)。

人は普通、自分の願いが実現したり、奇跡的な幸運に遭遇すると歓喜の声をあげます。が、聖書が指し示す賛美は、そのような歓喜と同一ではありません。例えば、ルカによる福音書のクリスマス物語に登場するザカリヤやエリサベト、マリアたちは、それぞれ正直に戸惑いやうろたえ、疑問を告白します。というのも、彼らが直面した出来事は「彼らが祈り願ったもの」ではなく、「神が彼らの都合を尋ねることなく勝手にもたらしたもの」だったからです。「どうして、いまなのですか?」「なぜ、わたしなのですか?」。半信半疑、受け止めきれない自分を正直にさらしながらも、なお彼らが神に心を向けていく時に、クリスマスの喜びと賛美にあずかっていったのです。
わたしは、そのような彼らの姿に励ましをもらいます。私たちの信仰に百パーセントはない。不純なもの、疑いや不信をいつも抱えている。けれど、その頼りない不確かな信仰であっても、なお神に向かい賛美をささげていくとき、「神、我らと共にいます」という経験にあずかり、わたしたちは「新しい歌、神への賛美を」与えられていくのです。

今年のクリスマスに向かう歩みにおいて、このわたしに「新しい歌、神への賛美」が与えられるよう祈りたいのです。わたしの願いではなく、神の祈りと願いを受けていくところに、キリストの教会は建てられていきます。