巻頭言『ここから始めよう』加藤誠

 主にあって二〇二三年、おめでとうございます。新しい年も、主日ごとの礼拝を大切にして歩んでいきましょう。

 詩編七一編は「年老いた人の賛美」、「信仰を杖とする人生」と呼ばれている詩編です。この詩人は若い時から老年に至るまで神を賛美する人生を送ってきましたが、必ずしも順風満帆だったわけではなく、災いに苦しめられて神から離れてしまった時もあったようです。「贖(あがな)ってくださった」(二三節)とは、「代価を払って買い戻される」という意味です。自分の力ではなく「神が苦しみの中にいた自分を、その恵みに連れ戻してくださった」。それゆえに詩人は「信仰を杖とする人生」の幸いを語ることができたのです。

 ただ、そう告白しながらもこの人は年老いた今、大きな危機の中にあります。「敵」に囲まれ、神の取り扱いを切実に求めながら賛美をささげています。

 アブラハムは九十歳を過ぎて最愛の息子イサクを失う危機に直面しました。年老いたダビデ王は息子アブサロムの反乱により都落ちを経験します。若き日の信仰の祝福が必ずしも穏やかな老年を保証するわけではないのです。が、それでも詩人は「主よ、あなたはわたしの希望」(五節)と賛美します。この「希望」の原意は「紐」だそうです。「縒(よ)る、引っ張る」が「忍耐、待つ」となり、「希望」を意味する語になったと。「希望」は順風満帆の中に育つものではなく、苦難の中に主なる神が示される慈しみによって「縒(よ)り上げられるつながり」です。どんな時にも切れることのない主なる神との「つながり」。わたしたちはいつでもそこに立ち戻り、始めていくことができるのです。