巻頭言「被造世界の危機とキリスト者」大秦野バプテスト教会協力牧師 日髙嘉彦

 かつて経済学者の佐々木隆生先生が「ヨーロッパキリスト教と近代の成立」という講演をされ、「かつてキリスト教、特にプロテスタティズムは様々な因習や旧来の体制から個を解放し市民社会の形成に一役買ったが、今日私たちが直面している問題に対しどのような役割を果たせるのだろうか」という問いで結ばれました。

 今日の問題とは、人口が爆発的に増加する中で、自然や環境破壊をどう食い止め、限りある資源をどう公平に分配し、富の偏りによる格差をどう解消するかという問題です。1700年頃までほぼ横ばいで五億人程度であった世界人口が、産業革命以降、特に二十世紀以降に急激に増加し、現在では八十億を超えています。世界銀行の報告によれば、富める国に住む一割の人口が、世界の富のおよそ半分以上を消費しています。また富める国の一人当たりのGDPが年間三万ドルであるのに対し、発展途上国では千ドルにも満たないとされています。

 さらに、化石燃料に依存した発展は、大量の温室効果ガスを大気中に放出し、地球温暖化を引き起こしています。地球温暖化は、気候変動、海面上昇、生態系の崩壊など、多くの深刻な環境問題をもたらしています。資源の枯渇や砂漠化を通して、地域紛争や難民など、平和と安定を脅かしています。

 私たちはキリスト者としてこの問題に真剣に取り組む必要があります。なぜなら、この世界は創造主によって「良いもの」として造られ、その実現のために生を与えられていると信じているからです。