巻頭言「神の国の幸いを生きる」加藤 誠

先週紹介した「ハイデルベルク信仰問答」の問1の答えには続きがあります。

 問1 生きるにも死ぬにも、あなたのただ一つの慰めは何ですか。

 答  わたしがわたし自身のものではなく、体も魂も、生きるにも死ぬにも、

    わたしの真実な救い主、イエス・キリストのものであることです。

   この方は御自分の尊い血をもって、わたしのすべての罪を完全に償い、

    悪魔のあらゆる力からわたしを解放してくださいました。

   また、天にいますわたしの父の御旨でなければ、髪の毛一本も落ちる

    ことができないほどに、わたしを守っていてくださいます。

   そしてまた、ご自身の聖霊によりわたしに永遠の命を保証し、今から後

    この方のために生きることを心から喜び、またそれにふさわしくな   

    るように整えてもくださるのです。

 ここには主イエスの『福音』の内実である「罪の救い」「悪の支配からの解放」「聖霊の助けの確かさ」が端的に語られています。

 例えば先週の聖書日課は「エステル記」でした。ハマンの悪のはかりごとが神によって見事に打ち破られ、ユダヤ人たちの憂いが喜びに、悲しみが祝いに変えられた物語です。しかし同時にそこに見えてくるのは、王と家臣たちの浅はかで愚かで節操のなさ、暴力には暴力で対抗するしかない人間の悲しい現実です。それは昔話ではなく、私たちが今生きている世界そのものです。その私たちに主イエスは神の国の幸いを手渡し、「あなたはわたしのものだ」と言い抜いてくださいました。この方のものとされて生きる幸いを今朝も聖書から聴いていきたいのです。