巻頭言「枯れた骨よ、主の言葉を聞け 加藤 誠」

 七六年前の八月一五日の大井町はどのような様子だったのだろうかと品川区の資料を調べていて、昭和二〇年五月二四日の東京城南空襲のことを知った。戦災地図を見ると大井町から戸越、大崎のあたりが真っ赤に塗られている。大谷恵護先生からは、今、大井教会の敷地になっている場所は空襲で焼け落ちた病院のボイラーだけがポツンと残されていたと聞いた。

そして大井町駅前(西口)にあるブロンズ像は品川区が非核平和都市品川宣言(一九八五年)をした際に建てられた「平和の誓い像」であること、その隣りのランプは「平和の灯」と呼ばれ、その灯は広島市平和記念公園にある「平和の灯」と、長崎爆心地公園にある「誓いの火」から分火し、合火して灯されていることを知った。我が町の先達たちが、あの戦争の悲惨と愚かさを忘れまいと、広島と長崎につながり「平和の誓い」を次の世代に手渡そうとしてきた祈りを覚えたいと思う。

預言者エゼキエルが目前にしていたのは、戦災の焼け跡が広がる荒廃した故郷であり、瀕死の重傷を負い、それまで信じて犠牲を払ってきたものが「虚構」にすぎなかったことに打ちのめされた人々であり、「枯れた骨」「墓場」と化したイスラエルだった。そのエゼキエルに主なる神は命じられる。「これらの骨に向かって預言せよ。枯れた骨よ、主の言葉を聞け。霊よ、四方から吹き来たれ。これらの殺された者の上に吹きつけよ」(エゼキエル書37・4、9)。主の吹き入れる霊は、悔い改め(方向転換)の霊であり、引き裂かれた心を癒し平和で包む霊であり、死んだ者を生き返らせ明日に向かう力を与える霊である。

今日、七六年目の八月一五日、共にその主の言葉を聞いていきたい。