巻頭言「方向転換」加藤 誠

「神の国は近づいた。悔い改めて福音を信じなさい。」(マルコ1・15)

 主イエスの福音宣教は、この言葉をもって始まりました。「悔い改めて」とは「方向転換」の意味であり、私たちに近づき突入してきた「神の国」に「しっかり心と体を向けていこう!」という呼びかけですが、今朝はこの「悔い改めて」が示している内容について、聖書にさらに聴いていきたいのです。

 マルコ十章には「金持ちの男」と主イエスとの対話が記されています。この男は「永遠の命」を求めてやってきたのですが、主イエスから「行って持っているものを売り払い、貧しい人々に施しなさい!」との衝撃的な言葉を投げかけられ、悲しみながら主イエスのもとを立ち去ったのでした。

 この場面を読むたびに、「この言葉はあまりにも厳しすぎないか。いったい誰がこの厳しい要求に応えられるだろうか?」という思いが湧いてきます。

 ただ、主イエスはこの男を決して「拒絶」しているのではなく、神の国に「招いている」こと、つまり「方向転換」を求めていることを覚えたいのです。

 この男は非常にまじめに律法を守ってきた信仰心篤い人です。ただし彼が求めていたのは「自分だけの救い」「自分が永遠の命を得ること」でした。その男に主イエスはこんな「方向転換」を求めたのではないでしょうか。

「君が見ているのは自分だけの救いだね。君は自分の救いを求めると同じように、自分の周りに生きている人たちの救いを考えたことはあるか。貧しい人たちがこんなに大勢いて、なぜ自分はこんなに富に恵まれているのだろうと考えたことはあるか。神さまはいったいこの社会をどんな思いで見ておられるのだろう…と、一度、神さまの思いにしっかり心を向けてみたらどうか?」と。

 さて皆さんは今朝の主イエスからどのような「方向転換」を受け取りますか?