巻頭言「恐れるな、小さな群れよ 加藤 誠 」

「小さな群れよ、恐れるな。あなたがたの父は喜んで神の国をくださる」(ルカ12・32)。

 先週の定期総会で二〇二〇年度のテーマ「主に信頼する」と共にこの聖句が選ばれた。今、この御言葉を通して、主は私たちの教会に何を語りかけられておられるのだろう。各々が黙想し、祈り、思い巡らす時を持てたらと願う。

「小さな群れよ」…ここで「小さな群れよ」と呼びかけられているのはどういう人びとだろうか。直前の文脈によると「信仰の薄い者たち」である。何を食べようか、何を着ようかと日々思い悩む者たちである。また「群れ」という言葉は聖書では羊に用いられることが多い。羊の群れは「羊飼い」を必要とする。「羊飼い」のいない群れはたちまち散り散りバラバラになり狼に襲われる。ヨハネ福音書十章では「良い羊飼い」である主イエスによって、今、囲いの中にいない羊も導かれて「一つの群れ」になると約束されている。

「恐れるな」…この呼びかけは、ザカリヤ、イエスの母マリア、野原で野宿する羊飼いたちに向けられている。人びとが想像もできない、「そんなこと、ありえない!」方法で、神の国の働きを実現されていく神に信頼し、従うようにと。また「恐れるな」は、「あなたは人間をとる漁師になる」、「ガリラヤに行け。そこでイエスにお会いできる」という不思議な約束と共に、ペトロをはじめマグダラのマリアなどの弟子たちに向けられている。人間の知恵や人間の言葉ではなく、主イエスが実現される神の国(喜び、安らぎ、希望)を選び取り、従うことは「恐れ」が伴うことなのだ。私たち「小さな群れ」を「良い羊飼い」として牧してくださる方の語りかけに心を澄ませて共に従っていきたい。