巻頭言「天に栄光、地に平和」加藤誠


 アドベント二週目は「平和のともし火」を受けていきます。

 二千年前、主イエスの誕生の知らせは野宿している羊飼いたちに届けられ、その際、天使たちは「いと高きところには栄光、天にあれ。地には平和、御心に適う人にあれ」と賛美しました(ルカ2・14)。

 ここで「(神の)御心に適う人」とはどのような人を言っているのでしょうか。一般的には「信仰深い人」というイメージがもたれているように思いますが、このあとルカ福音書で主イエスが神の国の福音を届けていった人々の顔触れをみると、実にさまざまな人たちがその招きを受けています。信じがたいことに、主イエスを敵視し罵詈雑言を浴びせている人たちも福音の招きを受けているのです。とすれば、「御心に適う人」とは「すべての人」と読み替えてもよいのではないか。少なくとも主イエスは、どんな肩書や立場、どんな状況にある人に対しても熱く、優しく、時に激しく、神の国の平和を届けていかれたのでした。

 先週あたりからニュースはサッカーのワールドカップ一色になっています。わたしはサッカーを観るのが好きですが、それでもいささかヘキヘキしつつあります。それまで「愚将」と呼ばれていた人が一日で「知将」と持ち上げられ、その数日後にはまた「愚将」とこき下ろされていく。我が国のチームが期待通りの結果をもたらさないと暴動が起こり、容赦ないバッシングが浴びせられる。人間とはここまで好戦的で暴力的で日替わりの気分屋で、怒りの感情をセーブできない存在なのか。その私たちが一番必要にしていて、私たちに大切なこと。それは「平和」です。そして主イエスが招かれる「神の平和」は、私たちが「人の栄光」を賛美するのではなく、「天の神の栄光」を共に見上げて賛美するところに与えられていく神の恵みなのです。