巻頭言「天に富を積む」~スチュワードシップ④~ 市川 牧人 神学生

 「タイパ」(タイムパフォーマンスの略)という言葉が広がり始めて久しい日本社会。そこに生きる私たちは、一分一秒を無駄にしないために頭をフル回転させ、人生の効率化に気を揉んでいます。経済が豊かになればなるほど人々は疲れているように見えます。そんな社会に生きる私たちはふと考えます。「自分は何のために生きているのだろう。」もっと言うならば、私たちはいつか死ぬ、であれば、今自分が必死になって追い求めていることに意味があるのだろうか。そんな私たちに主イエスは次のように語っています。「思い悩むな。ただ神の国を求めなさい。」このみことばから二つのことを学びます。

 第一に、私たちは神の国のこと以外は何も思い悩まなくてよい、ということです。主イエスは、ただ神の国を求めるだけでよい、と語られました。多様化し複雑化した社会で、あれもこれも欲しがる私たちの人生は散らかり、こんがらがっています。しかし、キリストが示した私たちの人生は思ったよりもシンプルです。ただ一点「神の国の拡大」のためにある人生です。それ以外は主にお任せしてしまえばよいのです。

 第二に、私たちの人生は死んだら終わりではない、ということです。神の国は永遠に続きます。だから主イエスは、天に富を積むことを私たちに命じました。この肉体の命における富や名声よりも圧倒的に重要なのが永遠に残る「天に積まれた富」です。

 私たちが「奉仕」をする意味はここにあります。私たちが大切にする時間やお金、労力を出し惜しみなく主に奉げ仕えるとき、間違いなく天に富は積まれてゆきます。私たちの人生が「奉仕」に向かうとき、私たちはシンプルで確かな人生を歩むことができるのです。