巻頭言「世を救うために来た方」加藤 誠

 大島博幸先生を迎えての二日間の特別講演会を感謝します。

 講演会前の一か月、毎週の礼拝で「福島主のあしあと教会」のオリジナル賛美歌「神の家族」を歌いながら祈りを重ねてきましたが、大島先生のお話を通して、その賛美歌が教会として大きな苦悩と痛みの中で生まれたものであること。「あしあと」の詩にあるように、倒れて歩けなくなった自分たちが主イエスに背負われてきた経験が下敷きになっていることを知りました。

 また一日目のお話では、大島先生からほとばしる熱量に圧倒されながら、福島で生きる方々が日々直面している重い課題、不安や緊張を改めて知らされました。私たち首都圏に住む者たちが使う電力のために起こった原発事故。今、取り組まれている「廃炉」作業や「汚染処理水」作業は、これから数十年間の監視を要する気の遠くなるような作業であり、「安全安心」キャンペーンで覆い隠されている闇の部分にしっかりと目を注いでいく責任があることを知らされたのでした。これからも福島主のあしあと教会の大島先生と教会員の皆さんと交わりを続けて、私たち自身の祈りとしていきたいと思います。

 さて、そのように私たち自身の力ではとても担えないような重たく大きな課題を示される中で、改めて「わたしは世を裁くためではなく、世を救うために来た」(ヨハネ12・47)と力強く語られた主イエスの言葉が迫ってきました。神の愛に背を向けて自分の「利得」に走り、自己中心の「正義」で他人を裁き、他者を赦すことのできない「救いなき闇」に閉ざさ、もがいている私たち。その私たちを救うために「光として世に来た方」、イエス・キリストの言葉に、今朝も心と体を向けていきたいのです。