巻頭言「わたしを何者だというのか?」加藤誠

 作家の最相葉月さんが約六年の歳月をかけて直接インタビューをしてまとめた『証し 日本のキリスト者』(岩波書店)を少しずつ読んでいます。

 自然災害や戦争、事件、差別、病など不条理あふれる世界で「なぜあなたは神を信じるのか?」「信じ続けられるのか?」。その問いを抱いて最相さんは北海道から沖縄、五島、奄美、小笠原まで全国のさまざまな教派の教会を訪ねて、百人以上の信徒や牧師、神父にインタビューしました。時間をかけて整えられた「原稿」ではなく、最相さんの問いかけに応える中に引き出された、何の飾りも脚色もない素朴な「語り言葉」の証しがそこにまとめられています。 

 読みながら「イエス・キリストの信仰」といっても実にさまざまであること、その人の人生に深く刻まれた「イエスとの出会い」があり、「他に代えがたい恵みや救いの体験」があることを改めて知らされ、問われました。「なぜ神を信じるのか?」「なぜイエス・キリストなのか?」という問いに、自分なら今どう答えるだろうか。そして、自分はそのことをはっきり証言できているだろうかと。

 今、私たち大井教会は「これまでの働き」を振り返りながら、「これからの教会の姿」を一緒に考え思い描こうとしています。「どんなことをしてきたか」、「これからどんなことをしていきたいのか」は大切なことです。が、しかし主イエスは「わたしはこの岩の上に、わたしの教会を建てる」と言われました。教会を建てるのは主イエスご自身であって、わたしたちの働きではない。では、わたしたちに求められていることは何か。それは「キリスト告白」ではないでしょうか。一人ひとりが「キリスト告白」を自分の言葉で周りの人々に証しすること。その告白なしに「キリストの教会」は建てられていかないのです。