巻頭言「わたしは良い羊飼いである」加藤誠

 あけぼの幼稚園は七四年前の今日、一九四九年六月一一日に設置認可を受けて、宗教法人大井バプテスト教会附属幼稚園として誕生しました。

 「戦後、荒廃した大井町の一角に、しののめを呼び覚ますように神はこの幼稚園を設立された。私たちはこれを『あけぼの幼稚園』と命名した」と教会の五十年史に記されています(百七ページ)。「あの愚かな戦争を止められなかった反省に立ち、聖書による人格教育が必要である」という教会の熱い祈りがそこにありました。戦争の暗闇の時代を生き抜いた人びとの心に、キリストの平和の光を照らし出す教会附属幼稚園としての歩みが始まったのです。

 あけぼの幼稚園は「何に」根ざし、「何に」仕える幼稚園なのか。わたしは次のように理解しています。「神の愛に根ざし、キリストの平和に仕え、子どもたちと保護者と共に、日々御言葉において成長する。」

 いま再び戦争の時代がひたひたと現実味を帯びつつある時に、幼稚園創立の教会の祈りを繰り返し心に刻みたいと願うものです。

 ヨハネ福音書十章には「わたしは良い羊飼いである」という主イエスの言葉が記されています。十字架の主イエスのみが私たちに豊かな命を与えてくれる方です。しかし、この主イエスの発言を聞いた人びとは「この男は気が狂っている!」と激しい非難を浴びせました。かつて日本が戦争に突き進んだ時代、敵性宗教の「聖書」でお国のために戦う兵隊を教育できるのかと、激しい非難がキリスト教に向けられました。さて、再び戦争に向かう時代にキリスト教会は誰の言葉に聴き従うのでしょうか。どんな時代状況にあっても「良き羊飼いである主イエス」の言葉のみに聴き従う教会でありたいのです。