巻頭言「あなたの若い日に ~あけぼの幼稚園創立感謝礼拝~」加藤 誠

 今から七十五年前、一九四九年六月に「大井バプテスト教会附属あけぼの幼稚園」は誕生しました。そこには初代牧師の大谷賢二先生の心を激しく揺さぶった二つの動機があったように思います。

 一つは、敗戦の傷跡が生々しく残る大井町で「住まいも衣類も失い、食物もない中で遊んでいる子どもたちを見るときにこれを放置することができない」思いにかきたてられたこと。もう一つは「キリスト教はあの愚かな戦争を止めることができなかった。日本の再興には、今度こそ聖書の真の平和を造る人材の育成が不可欠である」という使命を強く示されたこと。

 それゆえに「無料借室の一室の他は何の設備もなく、あるのは幼児教育の責任と使命と心だけであった」(あけぼの幼稚園二〇周年記念誌)という教会は、「聖霊の烈しい迫り」を受けて幼稚園設立を祈り始めたのでした。

 「あなたの若い日に、あなたの造り主を覚えよ」(口語訳:伝道の書12・1)。

 「コヘレトの言葉」(伝道の書)が書かれた時代は、バビロン捕囚後も次々に代わる宗主国の圧政に苦しみ、先の見通せない暗い時代であったようです。その時代に、コヘレトは若者たちに「すべてに耳を傾けて得た結論。『神を畏れ、その戒めを守れ。』これこそ人間のすべて」(12・13)と熱く語りかけました。

 徹底した現実主義者であるコヘレトは「人間は自らの知恵や富によって幸福を手にし、人生を確かなものにすることはできない」と見抜きつつ、「造り主なる神の時(カイロス)を感謝して受け、楽しみ生きることこそ人間の幸い」と語りました。このコヘレトの言葉は、同じように先の見通しにくい現代を生きる私たちにも、大切な真理を示しているのではないでしょうか。