「あなたがたのうちに働きかけて、その願いを起こさせ、かつ実現に至らせるのは神である。」(口語訳:ピリピ3・13)
あけぼの幼稚園が産声をあげたのはちょうど六十八年前の今日、一九四九年六月十一日のことです。『あけぼの二十周年記念誌』を開くと、初代園長の大谷賢二先生をはじめ教会員たちが、文字通り「火の出るような祈りの闘い」を毎日重ねてきた様子が、突き刺さるようにびしびしと伝わってきます。
「すべてが大いなる神の恵みである」という大谷賢二先生は「五つの恵み」をあげています。「第一の恵み」は、幼稚園が大嫌いだった自分が幼稚園の使命に熱くさせられてきたこと。戦後の荒廃した東京で、住まいも着る物も食べ物もなく遊んでいる子どもたちを見ていると幼稚園を嫌う理由を持ちだす間もなく、なんとか一日も早く世界に通じる真理に立ち、世界の平和をつくる教育をすることこそが日本復興の基であるという信念に燃やされてきたと。「第二」は、借家の一室以外に何の設備もなく、幼児教育の責任と使命と心だけの幼稚園に次々に大勢の子どもが集うようになったこと。「第三」は、幼稚園が最初から教会に希望と勇気を与えてくれてきたこと。「第四」は良い先生方がいつも与えられてきたこと。そして「第五」は教会と幼稚園の間に良い関係が築かれてきたこと。幼稚園の働きは教会と直結して(強制ではなく)イエス・キリストに到達しなければ真の幼児教育、人間形成は不可能だから…と。
これらの文章を読みながら、あけぼの幼稚園の歩みは「祈り」を学ぶ六十八年であったことを示されます。神が神ご自身の働きを進められる時には、人間の思いはそぎ落とされていく。「祈り」は、神を人間の思いに引きつけるためのものではなく、人間が神の願いに近づけられていくためのものなのだ、と。