主の問いに応え続けて 園長 佐藤伸人

 アジア太平洋戦争敗戦の焼け跡に放り出され、『飼う者のいない羊のように

弱り果てた』(マタイ9.36)子どもが溢れている有様を見て傷み、この魂を

何としても救いたいと教会の祈りが起されました。

 こうして神様のゆるしと憐れみの道筋が示され、大井バプテスト教会附属あ

けぼの幼稚園は誕生しました。教会の業としての幼稚園はキリストの体の部分

です。その使命は常にキリストの働きの表れです。人間のあらゆる思い入れを

排し、ただ主イエスの御意志が先立つ命の広場です。

 先生に近寄る子どもを叱った弟子達に、主イエスは『子どもたちをわたしの

ところに来させなさい。妨げてはならない』(マルコ10.14)と激しく怒りま

した。幼い魂が欲する命の求めはこれを聖霊に委ねよ、大人の都合を振り撒い

て子どもの邪魔をしてはならないと命じられました。何故ならば『神の国はこ

のような者たちのもの』(同)だからです。

 大人の勝手を浴びせる戦争への道程は、子どもの日常をからめ捕り変質させ

続けました。子どもの未来に人類の希望と平和を見ない国策は、敗戦と同時に

幼い魂を遺棄しました。教会の祈りは聖書に導かれ、子どもの世界をないがし

ろにする暗い世に、命の光なるイエス・キリストの訪れを告げ知らせる人材を

神様によって育む使命を賜り、今も私達を誘い続けます。

 創立64周年を刻んだキリストの働きから、私達は繰り返し問いかけられて

います。『子どものように神の国を受け入れる人でなければ、決してそこに入

ることはできない』(10.15)と。子どもの世界に充ちる神の国の求めを妨げ

ることなく共に求めるものであるのか。三代先、四代先の子どもの世界を見通

し、幼い魂を歪ませると予見した時に、勇気をもって今を悔い改める見識を求

めているのかと。