AIでは測れない 加藤 誠

日本の某トップ商社で社長・会長を歴任した方が雑誌のインタビューに応えている記事を読みました。
「人工知能(AI)を人事評価や採用に使う会社が出てきているが」
「AIは機械のように決められた仕事をする人は評価できるが、機械のような仕事をしていない人は評価できない。人間の心や感情、例えば部下のやる気は評価できない。それに企業はテキパキと仕事をこなし業績を上げる人だけで支えられているわけではない。仮に時間がかかり生産性が低くても、その人の存在で職場の雰囲気がなごみ、みんなのやる気が出るのであれば、大局的に見てその人は多いに貢献していることになる。AIの進化で可能性が広がるのは事実だが、逆に人間にしかできないことを大切にしなければならない」。

最近気になる言葉に「コスパ」があります。「コストパフォーマンス」の略です。「コスパ」は経営には大切な要素でしょう。しかし「コスパ」だけでは測れない大切なものがある。こんな話を聞きギョッとしました。二十代の起業家の女性の言葉です。「これまで文学や小説をほとんど読んだことがなかったので、その価値を知ってみたいと川端康成を読んでみた。それで分かったことは、文学とか小説はコスパが極めて悪いということだった」。

「コスパ」が万能になるところで失われていく大切なものを、彼女の言葉は見せてくれているのではないでしょうか。人びとの間でもてはやされている言葉ではなく、一人ひとりの人生、存在に輝きを与え、お互いを共に生かしてくれる言葉を、今朝も聖書から聴いていきたいのです。