釜ヶ崎で福音   平野健治

 「わたしの愛する兄弟たち、よく聞きなさい。神は世の貧しい人たちをあえて選んで、信仰に富ませ、御自身を愛する者に約束された国を、受け継ぐ者となさったではありませんか。」(ヤコブの手紙二章五節)

 

西南学院大学に入学する際に、加藤誠牧師から本をいただきました。それはカトリックの本田哲郎神父が翻訳した聖書でした。ある時本田神父がテレビに出ていました。彼は日雇い労働者の町「釜ヶ崎」に住み、狭い部屋で聖書を読み、礼拝し、貧しい人のために生きていました。その生き方は私に強烈な印象を残しました。私は神学生三年目の夏、本田神父に会うため、また一週間の研修のために釜ヶ崎を訪問しました。私はそこである一人の男性と出会いました。

彼から学んだ事、それは神様は、困難の中にある人々を通じて、私たちに語り掛けておられるということです。彼ら彼女らこそ神の国を受け継ぐものであるということです。私たちは困っている人、泣いている人を見て「かわいそう、手を差し伸べて、助けて差し上げよう、励まそう」そう考えてしまいがちです。それも必要です。でもそう思って行動を始めると、大切なことに気付きます。本当は私たちが助けられる側にいる、教えられる側にいると気づかされるのです。神様は世の貧しい者を選び、私たちに語りかけてくるのです。それは小さな声で届きます。私達が聞こうと思わなければ、聞こえて来ません。私はそれを聞き続けてゆく、そんな人間・牧師になりたいと思っています。

そしてそのような出来事はみなさんの身の回りでも起こっているはずだと思うのです。私達は誰から教わるでしょうか?私達は、小さくされている人から、困っている人から、泣いている人から、助けなきゃと思う人から教わるのです。そのことがきっとすでに私たちの周りで起こっているはずです。