希望をつなぐ仕事    加藤 誠

「そして今、神とその恵みの言葉にあなたがたをゆだねます。この言葉は、あなたがたを造り上げ、聖なる者とされたすべての人々と共に恵みを受け継がせることができるのです」(使徒言行録2032)。

 使徒言行録を読んでいると、パウロが次々に襲い掛かる困難の中でなお希望を抱いて前進し続ける姿に感銘を受けます。パウロ自身、「わたしは弱い」と告白しつつ、「わたしは弱い時にこそ強い」(第二コリント1210)、「わたしを強めてくださる方のおかげで、わたしにはすべてが可能です」(フィリピ4・13)と語るのです。パウロは自分を苦しめる敵や課題をゆだねるべき方を知っていました。「神とその恵みの言葉」こそが、私たちを平安で守り、神の恵みにつなげて、私たちをキリストの教会に建てあげることを知っていたのです。

 

 この秋、ルワンダから東京外国語大学にきたシュクルさんという女子留学生の話を聴きました。佐々木和之さんのもとで平和構築を学んでいる学生です。

彼女は二十四年前のルワンダ大虐殺で家族を失った女性ですが、平和構築を学ぶ前までは、加害者が口にする謝罪は社交上の演技に過ぎないと考えていたそうです。しかし、加害者と被害生存者とが同席して体験を語る授業で、加害者が自らの弱さと過ちを告白し、被害者が憎しみや悲しみと赦しの葛藤を乗り越えていくプロセスを語る姿を前に大きく変えられたと言います。人間の力では決して起こりえない、十字架のキリストの祈りが働くところで可能になる「希望の奇跡」を目の当たりにしたと。シュクルさんの話を聴きながら、憎悪の連鎖を断ち切れない私たちの間で働く十字架のキリストを知らされると共に、佐々木さんが仕えている「希望をつなぐ仕事」の大切さを示されたのでした。