巻頭言「わたしが生きているので 加藤 誠」

 新しいコロナウィルスのために、いま世界中が、これまで経験したことのない恐れと不安に覆われている。「寄り添い合い、支え合い、集い合う」という私たちの日々の営みの最も大切なものが次々に奪われていっている。愛する肉親の看病もできなければ、最期に手を握ることもできない。食卓を囲み、一緒に汗をかき、時に唾を飛ばしながら激論を交わす。人としての大切な交わりを奪われる中で、私たちはどう生きていくことができるのだろう。

 大井バプテスト教会が礼拝を休止するのは、八九年の歴史の中で二回目である。一回目は戦時中、東京での空襲が激しくなった時。それでも信徒たちは疎開先でそれぞれ家庭礼拝をささげ、信仰のともしびを灯し続けた。今回も私たちは共に集う形での礼拝は断念するけれど、それぞれの家庭が礼拝の場となり、教会の友を想い巡らし、教会のこれからを考えながら、聖書のみ言葉に深く聴く場となることを祈りたい。

「わたしはあなたがたをみなしごにはしておかない。…世はもうわたしを見なくなるが、あなたがたはわたしを見る。わたしが生きているので、あなたがたも生きるようになる」(ヨハネ14・18~19)。

十字架においてバラバラに散らされ暗闇にのみ込まれていく弟子たちを、主イエスのもとに共におらせるように助けたもう力。それが聖霊の働きである。聖霊が私たちの間に働いてくださるから、私たちは「みなしご」になることはない。この苦難の時にこそ、「わたしが生きているので、あなたがたも生きるようになる」という主イエスの恵みを体験させていただく時となるように。