レギオンの敗北  加藤 誠

 相模原で十九名の尊い命が奪われ、多くの人が傷つけられた事件から一年。U被告は「大切なのはお金と時間。それを無駄遣いしている重度・重複障がい者は抹殺すべきだ」という主張を今も強固に持ち続けているようです。

 事件一周年を前に放送されたニュース番組で「自分の中にU被告がいる」と語る一人の女性が紹介されていました。彼女は十代の二人の子を持つ母親ですが、自身の中学時代、同じクラスに障がいを持った男の子がいたが、他のクラスメートと同様、彼にどう接して良いか分からず、恐れを抱いていた自分は「U被告と同じだった」と正直に告白します。しかし今春、軽度の発達障害の長男が書いた「十八歳の自分へ」という文章の中に、「もし高校や大学に入れなくても、前を向いて生きていてほしい」という言葉を見つけ、母親である自分が長男に向けていた「ものさし」の間違いが示されたといいます。「スーパーのレジの仕事をしていると、たくさんの人と接する。年を重ねていろいろと身体に不自由を抱えている人もいる。でもそれぞれが精一杯生きようとしている。その姿に大切なものを見ていきたい」と。U被告を批判する以上に、わたしたちが自分の中にいるU被告と向かい合い、それをどう乗り越え、変えていくことができるのかを考えることが求められているのではないでしょうか。

 

 主イエスは、墓場を住まいとし石で自分を傷つけている男と出会い、彼を苦しめてきたレギオンという悪霊を追い出して癒されます(マルコ五章)。しかし、その代償に二千匹の豚が犠牲となり、人々は「ここから出て行ってほしい」と訴えるのです。ここで男を苦しめ、人々を支配しているレギオンとは何でしょうか。そのレギオンに勝利された主イエスに、今朝聴いていきたいのです。