ひとりの新しい人   加藤 誠

日本バプテスト連盟がアフリカのルワンダに派遣している佐々木和之さんの報告を聴きました。佐々木さんの働きは今年三月、NHKのBSドキュメンタリー「明日世界が終わるとしても」でも紹介されています。
ルワンダは国民の九割がクリスチャンの国ですが、その国で二十三年前に民族大虐殺が起こりました。多数派のフツ族急進派が少数派のツチ族のせん滅を意図して「ゴキブリどもを抹殺せよ」とあおり、「協力しなければ殺すぞ」と脅し、人々はナタを手に同じ村に住むツチ族に襲いかかりました。その後、ツチ族の政権が成立して裁判が行われ、虐殺主導者以外の一般の加害者は公共道路建設などの労働刑に服し、刑期を終えると自分の村に戻りました。つまり同じ村で被害生存者と加害者とが一緒に暮らす状況にあるのが今のルワンダです。
あるとき、教会でこんなやり取りがあったそうです。
「あの時、殺された人たちがいる天国に、虐殺に加担した人たちが後からやってきて一緒に暮らすことはイメージできますか?」
「あの時、あれだけ必死に命乞いをしたのに家族を殺した連中と、一緒になれるわけないじゃないか!」
同じ村に住む両者の間には冷たい憎悪の壁が厳然とありました。加害者が自分の罪に真摯に向き合い、心からの謝罪に導かれない限り、そして被害者がその謝罪を受け入れ赦さない限り、和解は成立せず、神の平和は実現しません。佐々木さんたちは、加害者と被害者の双方に寄り添いながら、両者が心からの和解に導かれ、新しい関係を構築していくための働きに仕えています。とても乗り越えられそうもない憎悪の壁を越えて、キリストにある新しい関係に導かれている人々の証しに触れて、大きな希望をもらう時となりました。