「一本の杖」を手に   加藤 誠

―教会のミッション(使命と働き)②伝道―

 

教会は何を伝道するのでしょうか。「伝道」とは「道を伝える」と書きます。「道」とは「人としてのあり方や生き方」を意味しますから、言葉で語ると同時に生き方が伴っていないと伝わりません。そこが難しいところです。

 

主イエスは「時は満ち、神の国は近づいた。悔い改めて福音を信じなさい」(マルコ1・15)と言って伝道活動を始めました。「神の国」とは「神の愛の支配」であり、「神の根源的で限りない愛」のことです。善行を積んだ者だけに与えられる愛ではなく、「悪人にも善人にも太陽を昇らせ、正しい者にも正しくない者にも雨を降らせてくださる」(マタイ5・45)、誰にでも分け隔てなく注がれる愛のことです。子どもが親に手を引かれて歩くように、わたしたちもこの神の愛に手を引かれて生きる時、他では得られない平安と、自由と、勇気を与えられていく。その「さいわい」を語り、生き方で示されました。

クリスチャンは、他の人に比べて人格的に、また言葉と行動において優れているというわけではありません。ただ、一つだけ持っているもの、知っていることがあります。それは「神により頼んで祈るさいわい」です。Aさんは教会に集まる人たちを見て「なんと弱い人たちだろう」と思い、大のおとなが子どものように神に祈る姿に笑ってしまったそうです。「祈ったからってどうにかなるの?」。けれどもしばらく礼拝に出るうちに、自分の弱さを認めて「あなたの愛を分けてください」と神の前に座る時、自分の心に静かに注がれていく温かな力を感じるようになっていったと言います。「祈り」という「一本の杖」を手に歩む「さいわい」を学んでいく。そこに「道」ができていくのでしょう。